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水 沢 有 美

水 沢 有 美

水沢有美さんと<青春学園シリーズ>第4回

水沢有美さんと<青春学園シリーズ>第4回
第一部:夏木陽介主演『青春とはなんだ』(3)
消えた水沢有美さん~『青春とはなんだ』第25話「どろんこ作戦」篇~


さて、第21話「わが道を行く」でほぼ全篇で出ずっぱりの活躍した水沢有美さんですが、今回紹介する1966(昭和41)年4月10日に放送された第25話「どろんこ作戦」では、単独のセリフはありませんし、実は後半になって突如として水沢有美さん扮する佑子が消えてしまうという現象が起きてしまいます。しかし、そのことは後半に触れることにします。また第21話とこの第25話の間の第23話「蛍の光」(1966年3月27日放送)にクレジットはありませんが、水沢有美さんが卒業式前に校門で準備する女生徒たちの一人として登場しているようです(〈青春とはこれだ!プロジェクト〉での指摘による)。確実に確認できなかったのですが、ちらりと水沢有美さんらしき女生徒の顔があるように思えました。

 さて第25話に話を戻しましょう。当初『青春とはなんだ』は2クール26回で終了の予定でした。これについては、夏木陽介さんもこう回想されています。

〈梅雨が明けた7月の或る日、スタッフと一回目の会合が行なわれた。その席上解った事は先ず放送がその年の65年10月24日から始まる事。記憶に間違いがなければ2クール、つまり26話完結で日曜日の8時~9時オンエアー。逆算して第1回目の放送迄に6本のストックを制作する。(以下、略)〉(『大きな声でナイショ話』9月号、2003.8.25)

 放送業界は、3ヶ月を13週と考えて1クール、13本を基本としています。つまり1965年10月から始まる『青春とはなんだ』は、翌年4月上旬、つまりプロ野球シーズン開幕前には終了という予定だったのです。それがNHKの大河ドラマを凌ぐ人気となり、延長が決まったわけです。

〈当初2クール、つまり半年で完結するはずだったドラマも好評につき又半年延長することになり(以下、略)〉(『大きな声でナイショ話』10月号、2003.9.25)

 半年と言ってもプロ野球シーズンの日曜夜8時の放送ですからプロ野球の放送との兼ね合いもありますからおよそ1クール分の15本追加の41話までの制作となりました。しかし、その延長決定のおかげで水沢有美さんは日の目を見る? ことになったわけです。第2回で引用した夏木陽介さんの言葉<その後の私の人生も全然違っていた>ではありませんが、この『青春とはなんだ』の延長がなければ、水沢有美さんの人生も大きく変わっていたのかも知れません(ちょっと大げさかな?)。

 さて、第25話に話を戻しましょう。というわけで「どろんこ作戦」は<当初は最終回に予定されていた>(宇留野仁一著『「青春とはなんだ」大全~嗚呼!青春~』2003.4.25)らしく宿敵、北日高校ラグビー部との試合が描かれるという最終回の第41話と同じような展開を見せます。
脚本は、須崎勝弥。監督はクレジットでは、松森健(1928年生れ)、児玉進(1926年生まれ)という二人監督でした。何故、二人監督なのか、また役割分担はどうなっているのかが長く疑問に思っていたことでしたが、この件について高瀬昌弘監督(1931年生まれ)の著書『昭和千本のドラマたち』(廣済堂、2007年11月)で真相が明らかになりました。この著書ではさらに驚くべきことが明かされていました。実は、二人監督ではなく高瀬監督を含めた三人監督だったのです。証言を聞いてみましょう。

〈第25話「どろんこ作戦」は、芝居のシーンは松森さんが担当し、北日高校と森山高校との試合のラグビーシーンが、高校、大学とラグビー部でバイスキャプテンを努めた、ラグビーに詳しい児玉さんが撮り、客席関係のカットは私が撮った。砧育ちの、そして一緒に酒を酌み交わした、ほぼ同世代の3人が力を合わせてつくり上げた一本のドラマであった。〉(31頁)

加東大介さんに「さすが東宝、3人で監督とは」(同書32頁記載)と唸らせたこの第25話は、『青春とはなんだ』が監督デビューとなったほぼ同世代で作り上げた一本だったのです。児玉進監督がその後『青春とはなんだ』のメガフォン(7話~10話と前半の重要な部分を監督している)を撮っていないことを考え合わせてみると体調面かあるいは本編(東宝映画の方)の仕事の関わりがあったのではないでしょうか。ともあれ最終回になりえた回だけに力のこもった作品なっています。

まず、本題に入っていく前に恒例となったクレジット・ボードを眺めておきましょう。

1枚目 夏木陽介
2枚目 藤山陽子
3枚目 豊浦美子、岡田可愛、大沢健三郎
4枚目 矢野間啓治、木村豊幸、柴田昌宏、関戸純方
5枚目 樋浦勉、木下陽夫、松浦忠、木浪茂、杉本哲章
6枚目 松田八十栄、北島マヤ、遠山智英子、有田めぐみ、水沢有美
7枚目 坂本武、大前亘、二瓶正也
8枚目 藤岡琢也、奥野匡、七尾伶子
9枚目 名古屋章、菅井きん、三遊亭小金馬
10枚目 山茶花究
11枚目 加東大介

水沢有美さんは、第21話と違って今度はレギュラー女生徒では最後尾となってしまいました。登場の仕方もそんな感じなのですが、こういったキャストのクレジット順というのは誰が決めるのでしょうか。意外と物語内容や登場シーンと連動しているような気がします。また、ある種の収まりの良さというか美学が働いているような気がします。

さて、北日高校と戦うことになったラグビー部を応援するために女生徒たちで応援団を作ることになります。その応援団の先頭に立つ7人の女生徒の一人が水沢有美さんでした。他の6人は豊浦美子、岡田可愛、松田八十栄、北島マヤ、遠山智栄子、有田めぐみ、というレギュラーの女生徒たちです。サブの応援団の女生徒たち6人は、普通の白の体操着なのですが、この7人は紺か黒の上着で左腕あたりに二本のストライプが入っていると洒落た格好をしています。
ちなみに今回の水沢有美さん登場シーンは、4~5場面とはっきりとわかりませんでした。今回は全体を32場面と捉えたのですが、つまりはっきりと確認できたのが4場面であとの1場面は、はっきりとしなかったというわけです。ともかく順に追ってコメントしていきましょう。サブタイトル前のプロローグ・シーンは教室での加東大介さん扮する山角先生の授業シーンから始まるのですが、この教室にはレギュラーの女生徒は、豊浦美子さんと岡田可愛さん以外は見当たりません。教室の生徒たち全員をカメラが舐めながら映し出すのですが、レギュラーの女生徒はこの二人だけでした。みんなが出てくるのは中盤以降となります。

第1場面(#13) 校門手前。
ラグビー部が街へランニングしに出て行くのを歓声をあげながら手を振って女生徒たちが見送る場面。水沢有美さんは、松田八十栄、北島マヤ、遠山智映子さんら三人の後ろから顔を覗かせており、三人の会話に相づちを打ったり笑ったりして反応するだけでした。女生徒たちはレギュラーの7人の他十数名はいる感じなので、おそらくその後の応援団でのサブをする女生徒たちを含む面々が揃っていたと思われます。

第2場面(#20)
警察署の廊下から部屋へ新しいユニフォームをかかえて永井先生(藤山陽子)に付いてくる女生徒たち7人がレギュラーの面々。水沢有美さんは、一番後ろにいるので顔がちらほらと映る程度。セリフとしては、女生徒が揃って「起きろ!」と大声をあげて眠っているラグビー部員を起こす場面にみんなと一緒に。

第3場面(#21) 警察署の前。
女生徒たちがボロボロの汚れた前のラグビー部のユニフォームを抱えて警察署を出てくる時に一番後方にいる水沢有美さんがチラリと見えるのですが、画面をストップモーションにしないと確認できないほどのチラリ感でした。

第4場面(#24) 体育館の中。
ここで応援団の女生徒たちが集まっています。さきほど書いたようにレギュラーの7人が腕辺りに白い二本のストライプ線が入った黒っぽいセーターを着て、残りの女生徒が普段の白い体操着姿をしています。順子(豊浦美子)と勝子(岡田可愛)の二人が付け焼刃で覚えたラグビーのルールを実演しながら教えているシーンです。水沢有美さんは、スクラムを組まされて倒れこんでしまうのでした。

 さて、次の登場場面は北日高校との試合当日となります。当然、応援団の女生徒たちも勢ぞろいのはずなのですが、水沢有美さんはいるようないないような感じなのです。いえ確かにいたようなのです。でも途中で消えてしまうのです。このラグビーの試合のシーン(#30、#32。#31に神社での山角先生と永井先生のシーンが入る)は時間を追って検証していくことにします。時間は第25話開始からのおおよその経過時間です。

○32分40秒~35分30秒 ラグビー場。勝子を先頭に応援歌「貴様と俺」を歌っている森山高校側の全員。台に立って腕を振って指揮をしている中に水沢有美さんが見えます。ロングの俯瞰で壇上の女生徒たちが映りますが、7人はいますので水沢有美さんがいたのは間違いありません。

○35分48秒 キャプテンの林(関戸純方)が相手をタックルして倒して歓喜をあげる応援団の女生徒たちのシーンから6人しか映らなくなります。これ以降、佑子役の水沢有美さんの姿が消えているのです。以下に羅列するシーンは同じ並びになっていますが、画面に向かって右から有田めぐみ、北島マヤ、岡田可愛、豊浦美子、松田八十栄、遠山智英子です。ただし、私は北島マヤさんと松田八十栄さんの判断が今ひとつ掴みきれていないので、この二人は入れ違っているかもしれません。

○36分40秒 北日高校にゴールを決められガッカリする応援団の女生徒たち。やはり6人だけです。

○40分37秒 森山高校のトライが決まって大喜びする応援団の女生徒が映りますが、やはり水沢有美さん以外の6人です。

○41分1秒 キャプテンのゴールキックを見ている応援団の女生徒たちのカット。

○41秒7秒 ゴールが決まって手を挙げて喜ぶ応援団の女生徒たち。

○42分36秒 肩を組んで応援している応援団の女生徒たち。

○43分3秒 肩を組みながら壇上で横に歩いて最後の応援をしている応援団の女生徒たち。

○43分12秒 ペナルティーを取って飛び上がって喜ぶ応援団の女生徒たち。

○43分38秒 勝利が決まって喜ぶラグビー部員たちを眺める森山高校の応援席がロングで映るのですが、壇上にいるのは6人です。

○46分35秒 勝利の後、ラグビー部員たちに訓辞をする野々村先生(夏木陽介)の背後にいる応援団の女生徒たちは6人。

 別に詳細に見ていく必要はなかったのですが、つまり35分30秒の段階まで存在していた佑子(水沢有美)が試合の始まってからの35分48秒の時点で突如として消えてしまったのです。これは神隠しに遇ったのでしょうか? ともあれミステリーなのです。
 こればっかりは当事者である水沢有美さんに当時を想い出していただいて教えてもらうしかないのですが、取りあえず考えられる理由としては次の三つです。

一つは、撮影当初は水沢有美さんはいらしたのですが、用事があって早退されたという見方。
二つは、この試合のロケは一日では終わらず数日、少なくとも二日になったが、水沢有美さんはあいにく一日目しか参加できなかったという見方。
三つ目というのは、上記二つ以外の理由ということなのですが、考えられるのは上記の二つで間違いないと思いますし、確実なのは二番目のロケが数日に渡ったというのが妥当な線だと思います。
私が睨んでいるところでは、この第25話の撮影時頃の水沢有美さんは、中学卒業や高校進学といった時期になっていて、それが影響しているのではないかと思うのですが、どうなのでしょう。(付記:水沢有美さんによれば、このように「繋がっていない」状態とはご存じなかったようです。現役の学生が生徒役をしているので、学業を優先させるという方針だったようですので、その関係で水沢有美さんはロケの一部に参加されなかったようです。撮影も苦労してその辺りを誤魔化していたようです。これもビデオで何度も観て確認できる現在だからこそ判明した出来事でした。せっかく数十年ばれなかったのにね。)

  次の第5回は、第28話「いかすぜ!鉄腕」を取り上げます。監督は再び水沢有美さんをいつまでも中学生としか見ていなかったという高瀬昌宏さんなので、どうやら水沢有美さんの活躍ぶりが期待できそうです。


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